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西成、将棋愛好者の集い [日記]

写真はサポーティングハウス「おはな」にて。向かいが有村潜さん。漫画「カマやん」の作者でもある。 

 今日は午後から西成の釜ヶ崎で毎年一回開かれている「将棋愛好者の集い」に行く。私は今年で15回目になる。新今宮文庫という図書館を借りて開催され、今年は28名参加。ABCに分れたトーナメントを行い、敗者の人と五面指し指導対局をするのだ。景気や天候によって参加者に変動があり、数年前の不況のときは求人が激減して、労働者の人も表情が暗かった。今は50代前半までは仕事が増えているが、55歳から65歳(それを過ぎると高齢者の保障がある)までの世代は求人も厳しい状況だそうだ。将棋大会に参加する人もホームレスの人が大半だが、このイベントは私も楽しみにしている。

 午後からの雨で、労働福祉センターの一階は人であふれていた。将棋大会が終わってから、漫画「カマやん」の作者であり、福祉センターの職員でもある有村潜さん(NPOの街づくりネットワークでも活躍されている)に、釜ヶ崎を案内してもらう。このあたり一帯はいわゆるドヤ街である。ただ最近は外国人バックパッカー向けのホテルが多くなって、街も変貌を遂げているそうだ。

 毎日の求人について説明してもらったが、九州や北陸での出張もあるそうだ。求人難はましにはなったが、賃金の単価が下がっているので、二重にきつい意味もあるそうだ。「最近は若い人のホームレスが出現してきていますねえ」尋ね人の張り紙を見ながら、有村さんが話す。

 ホームレスの人が、今晩のねぐらであるシェルターにあるつくために夕方は行列ができるそうだ。炊き出しもある。写真は撮りにくかったが、数枚撮る。400人収容、600人収容のシェルターの施設があり、後で案内してもらった。

 センターの向かいは「萩之茶屋小学校」で漫画「じゃりんこチエ」のモデルらしい。学校の塀にそって屋台がずらり「ここは数日後に撤去されるのですが、わかっていて直前に引き払い、作業が終わるとすぐに組み立てて店を再開します」夕方なのに人が少ないが、このあたりはむしろ早朝が混みあうのだという。

 シェルターはずらりコインロッカーが並んだような建物で、部屋は2畳一間だった。シャワーはひとり15分。夏は冷房がないのと、外の方がええと、シェルターを望まない人もいる。「半分就労、半分福祉が理想なのですけどねえ」100%依存だと、無気力になってしまうケースもあるのだという。

 最近はホテルだったところを、サポーティングハウスにしているところも増えてきたそうだ。二軒案内してもらった。65歳以上のホームレスの人が入所できる場所で、「入所してからのアフタケアーが大事ですけどねえ」と有村さん。初めに行ったところは「メゾンドヴューコスモ」連絡してあったので、将棋好きの人が駒を揃えて待っていた。時間が無かったが、二面指しで指導対局をした。超早指しで10分で二局指す。帰りに部屋も見学させてもらった。

 もう一軒は「ウェルフェアマンションおはな」で、ここでも将棋好きの人が待っていてくれて、二面指しをした。終わってからとっても感謝される。部屋は三畳一間で、シェルターに比べるとはるかに住み心地はよさそうだった。「福祉は機能さえすればいいものなのですけどねえ」

 その後で「四角公園」そして「三角公園」に行く。ちょうど炊き出しがあって、行列ができていた。今日はおにぎりだった。キリスト系のボランティア団体とのことだった。向かいに「ふるさとの家」もあり、談話室ではくつろいでいる人がいた。このあたりは昔、釜ヶ崎の暴動があったときにテレビでは見たことのある場所である。異国にきたような錯覚をする。

三角公園の炊き出し

 

「恐そうな街に見えますが、みんなおとなしいひとばかりですよ」ある面では人情味あふれる居心地のいい環境なのだと聞いた事がある。みんなで助け合う、支えあう雰囲気もあるのだ。外人さんが通っていった。「労働者の人も始めは外人さんに面食らったかもしれませんが、今はなじんだ光景になっていますね」

 居酒屋「百番」で打ち上げをする。ここは高村薫さんも案内したことがあるそうで、「照柿」の取材だったらしい。今日はいい体験をさせてもらった。今度は「ホームレスの人がガイド役をするシステムもあるので、是非どうぞ」と誘われている。

 私は義母の件で、福祉や介護のことを少しは知るようになってきたが、まだまだ現実は理解できていない。こういった問題は身近にならないと、親身に考えないものである。でも将棋を通じて、釜ヶ崎となんらかの関わりを持つようになっているのも、何かの縁なのだろう。有意義な一日だった。


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コメント 8

kobecco

 将棋を通じていろいろな人と交流を持てるのはいいことですね。釜ガ崎は昔歩いてみて回ったことがありますが、最近は行っていません。カマやんというマンガも読んでみたいですね。
by kobecco (2006-10-24 06:20) 

モリノブ

kobecco様
 釜ヶ崎も以前のような暗いムードは遠ざかった感じですが、それでも冬を向かえると厳しい環境にあるようです。
 外国人バックパッカーのホテルは、ロビーにパソコンも置いてあります。
by モリノブ (2006-10-24 09:02) 

ばらーず

15回も将棋会が続いているのですね。継続は力なりといいますが、素晴らしいですね。
先生、今ひらめいたのですが、指導対局でお弟子さんも協力されたら如何でしょう?(山崎七段の釜が崎デビュー)とか。
by ばらーず (2006-10-24 09:31) 

じん

釜ヶ崎、なつかしいですね。私も最近、行っておりません。
おもわず、ありむらさんの本、二冊、読み返してしまいました。
by じん (2006-10-24 13:45) 

osaki

前回は、公園に行きそびれてしまったので、
ぜひ次回は行ってみたいと思っています。

ここに来ると、外国人バックパッカーが大阪が好きな理由が分ります。
by osaki (2006-10-24 18:56) 

モリノブ

ばらーず様
 私は指導しにいっていると言うよりも、そういう場に行くのが、自分なりの楽しみになっています。将棋の場が好きです。
by モリノブ (2006-10-25 19:44) 

モリノブ

じん様
 異国に来たような雰囲気ですが、NPO,NGOなどボランティア団体の活動が目に付きます。「カマやん」のモデルはWさんで私の知人でもあります。有村さんに、カマやんグッズをいただきました。売り上げは寄付されるそうです。
by モリノブ (2006-10-25 19:50) 

モリノブ

osaki様
 外人さんが多いのに驚きました。バックパッカーには気に入られているみたいです。ホテルのロビーに入ったとき、思わずここはアジアだなあと思いました。
by モリノブ (2006-10-25 19:52) 

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